2015年03月08日

市役所5分割のコスト増と24区役所を5つへ集約のコスト減、どちらが大きいか

 大阪市を特別区に分割するというのは、「市役所など大阪市全体のことを1ヶ所で行う事業を5つの特別区の区役所へ分割して、それぞれで行う」のと同時に、「現在の24区役所で行っている仕事を、5つの特別区の区役所で集約して行う」です。
 市役所で行う仕事を5つの特別区の区役所へ分割して行うと経費や仕事量は、一般的に「変わらないか、増えるか」だとしても、現在の24区役所で行っている仕事を、5つの特別区の区役所へ集約して行うと経費や仕事量は、一般的に「変わらないか、減るか」です。
 市役所の仕事を5つの特別区の区役所へ分割することで増える経費や仕事量と、現在の24区役所の仕事を5つの特別区の区役所へ集約することで減る経費や仕事量のどちらが大きいのかは、整理が必要です。

 まず、「市役所の仕事で特別区の区役所へ分割する仕事量」と「現在の24区役所の仕事で特別区の区役所へ集約する仕事量」のどちらが大きいのかを、従事者数をベースに考えてみます。(予算の支出額で比べるなら、過去、橋下市長が「区長の予算は○億円」とネタにしていたように、市役所側が圧倒的です。)

 まず、職員数の割合ですが、平成24年4月の大阪市の市長部局等職員数が13845人。(区役所職員数を含みます。)広域移管の職員数を補正すると、広域移管で府へ移すのが2053人、府から来るのが58人、差引11850人です。
 これに対して、パッケージ案に挙げられていた現区役所職員数を合計すると4912人。割合は42%。
 市役所側と区役所側で分けると、区役所側の方がやや少ないようです。

 次に、集約した時の効果割合(逆にいうと、分割した時の影響度合い)を考えます。
 以前の記事「今更ですが、大阪都構想での事務分担の議論」の保健所や生活保護の事務分担の議論の中でも出てきていましたが、市役所や保健所(生活保護では緊急入院保護業務センターの例が挙がっていました。)が大阪市一括で事務を行うのは、大阪市一括で行うのが効率的な業務です。裏返しに、区役所で事務を行うのは、大阪市一括で行っても、それほど効率的ではない業務です。

 合わせて言うと、大阪市の事業を特別区に分割して行うとは、次のふたつを合わせて行うことです。

(1)従事者数のやや多い、分割して行うとかなり非効率な業務を1市役所から5つの特別区の区役所へ分割(この分割で特に問題になる点は、記事「大阪市の本庁機能の分割を考える」を参照)

(2)従事者数のやや少ない、集約してもそれほど効率の上がらない業務を5の現行区役所から、1つの特別区の区役所へ集約

 (1)の分割の影響と(2)の集約の効果を比較するなら、(1)の分割の影響の方が大きいことは明らかでしょう。
 24区役所の集約による効果は、分割によるコスト増を覆すようなものには、なりそうにはありません。


 また、5の現行区役所から特別区の区役所へ業務を集約する、いくらかの効果を台無しにしそうな話があります。

 24区役所から特別区への業務集約の効果は、業務全体を集約しなければ効果になりません。
 それなのに、パッケージ案では現在の24区役所に対応して、特別区の支所を配置するとしており、現在の区役所業務のうち、区役所と支所の事務分担を次のようにするとしています。(元データ 01-P24 元サイト
支所の事務.jpg

 人員配置の上で、支所を効率的に運用しようとすれば、事務精通者が必要な業務を支所の窓口業務から除外して、基礎的な知識だけで支所の窓口業務を行えるようにすることが必要です。そうすることで、支所に少人数の職員配置で幅広い範囲の窓口業務を行うことができ、支所の誰かが休暇を取ることがあっても、他の職員が補完することができます。

 支所の事務分担表を見ると、現在の24区役所の対市民の窓口業務の大半を支所で行うとしています。(更に凶悪なことには、支所の業務とした窓口業務は、区役所の業務から外してあります。)
 恐らくは、「特別区になって特別区の区役所は遠くなっても、支所で今までの区役所で行っていた手続きや相談はできるから、市民の利便性は低下しない」と言いたいのでしょう。

 でもこの事務分担のように、支所で「今までの区役所で行っていた手続きや相談ができる」ようにしようと思えば、支所に事務精通者の配置が必要です。事務精通者が精通する事務の範囲は当然狭いですから、1支所に配置を要する職員数も、多く必要になります。

 現在の区役所であれば、窓口業務と内部事務を同じ場所で行っていますから、窓口が暇ならば他の事務作業を行うことができますが、この事務分担のように支所で窓口業務、特別区の区役所で内部事務としてしまうと、窓口が暇な時、窓口要員は遊ばせておくことになります。
 特別区はそれぞれ5の支所を、現在の24区の単位で配置しますから、事務精通者を配置しながら遊ばせてしまう窓口要員の総数は、馬鹿にならないでしょう。

 特別区になっても「支所で今までの区役所で行っていた手続きや相談ができる」から、市民の利便性は変わらないと言い訳をしたいのは分かりますが、当然、このような事務分担・職員配置は非効率です。
 区役所現場の人からすれば「支所にそんな職員を貼り付けようとすれば、区役所を特別区に集約する効果なんて吹っ飛ぶし、そもそもどうやれば、支所にそんな職員を貼り付けられるのか分からない」という話になるように思います。
 パッケージ案は、言い訳に使いたい支所の事務分担は明確に示しますが、区役所ごとの部門別の職員配置数まで細かく計算しながら、支所の職員数や運用イメージには一切触れていません。


 また、現在の区役所の対市民向け窓口事務を、特別区の区役所と切り離して支所に担当させる問題を、もう1点指摘しておきます。

 大阪市を特別区に分割する、ほとんど唯一の効果は「地域の実情に応じた施策展開ができる」です。(ただ、形式的にはそういう話が成立するとしても、40万人規模とか70万人規模の基礎自治体が、市民に身近な行政運営ができる規模だとは、わたしは全く思っていません。ニアイズベターを語るなら、規模が大き過ぎます。)
 そこには当然、「市民の意見に現在よりも丁寧に耳を傾けられる」という要素も含まれているはずです。

 その市民の意見が、最も直接的に市役所・区役所へ届けられる場のひとつが「窓口」ですが、その窓口対応から、これまでの企画担当だけでなく、区役所の内部事務担当すらも遠ざけてしまうというのです。
 果たして、特別区には、今までより、市民の声が届くようになるのでしょうか?

元記事「大阪都構想パッケージ案のコスト論」より

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2015年03月09日

財政調整特別会計は大阪市から移転される2200億円の一部しか管理しない

 まず、話の経緯です。

 京都大学大学院教授の藤井聡氏が、2015年1月27日「大阪都構想:知っていてほしい7つの事実」で、「【事実3】年間2200億円の大阪市民の税金が市外に『流出』します」「【事実4】流出した2200億円の多くが,大阪市「外」に使われます」と主張されました。

 これに対して、橋下氏は「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」と反論をされました。
 以下は、2015年2月7日の橋下氏のツイートです。(元ツイート
s-00橋下氏ツイート.jpg

 この橋下氏の反論には、様々に指摘したい点があるのですが、ABCテレビ「正義のミカタ」2015年3月7日分で、藤井聡氏が「特別会計に入れられるのは半分の1100億円」という指摘をされたので、今回はその説明です。

 まず、大阪都構想後の財源配分は、次のようになるとされています。(元データ 元サイト
02大阪都構想実現後の財源配分.jpg

 この図は、平成24年度の大阪市の一般会計の財源額8461億円を、大阪都構想が実現した場合、大阪府に2288億円、特別区6173億円で財源配分するということが示されていて、その財源の内訳も示されています。

 そして、橋下氏が大阪市から移管される2288億円を管理するとしている財政調整特別会計のイメージは次のとおりです。(元データ 元サイト
01財政調整特別会計イメージ.jpg

 都区協議会は、財政調整特別会計で取り扱う、三税(法人市民税、固定資産税、特別土地保有税)の大阪府と特別区の配分割合を協議することになっていますが、この特別会計を都区協議会がチェックすると(だから、2200億円の市外流出はないと)橋下氏は主張されているのです。

 ところで、1番目の財源配分の表の、大阪府側2288億円の細目を、財政調整特別会計を含めた、お金の流れのイメージ図に落としこむと次のようになります。
(地方譲与税・宝くじ等は、正しくは他所から交付を受けるイメージになりますが、書ききれなかったので、府税と一緒に記載しました)

03特別区の納税と住民サービス_金額有り.jpg

 大阪市から移転される2288億円のお金の流れは、財政調整特別会計に行く三税(法人市民税、固定資産税、特別土地保有税)と特別区分の地方交付税以外にも、いっぱいあります。
〇府税 12億円
〇地方譲与税・宝くじ等 297億円
〇地方交付税の移転 470億円
〇都市計画税・事業所税 400億円
・・・の合計1179億円は、財政調整特別会計を通らずに、大阪府の一般会計に組み入れられます。
 財政調整特別会計を通して、大阪府の一般会計に繰り入れられるのは、大阪市から移転される2288億円のうち、1109億円に止まります。


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2015年03月16日

5区案による30万人規模最適の否定は「こんな試算、やらない方がマシ」を示す

 2010年、当時、大阪府知事だった橋下氏が、大阪都構想の主張を始めた時、特別区の規模は、30万人程度、大阪市を8〜9の特別区に分割するとしていました。

 こういった彼らの主張を正当化するため、大阪府に有識者による大阪府自治制度研究会(2010年4月〜2011年1月)を設置し、とりまとめを行いました。(有識者の研究会と言いながら、実際は知事の意向を受けた府職員が、事務局として検討資料の作成を行い、議論の方向性を作りました)

 この中で、基礎自治体(市町村や特別区)の最適規模についても議論を行い、30万人規模を最適としました。

 意外かもしれませんが、住民と市長の距離感(=行政への住民の意見反映)についての議論はなく、主には、次の資料から、住民1人当たりの行政経費(言い換えると、市の予算額)が、最小になるのが30万人規模だとして、30万人規模を最適としました。
01適正規模(大阪府).jpg
02適正規模(全国).jpg
元データ 元サイト

 つまり、30万人規模最適というのは、「住民と市長の距離感」の最適ではなく、行政経費が最小になるという意味で、最適規模が主張されたのです。

 当時の大阪市の住民1人当たり行政経費(=市の予算額)が約60万円、それに対して30万人規模市の平均的な住民1人当たり行政経費(=市の予算額)が約30万円なので、大阪市を30万人規模の特別区に分割すると、行政経費が大幅に圧縮されるのだと主張されました。

 この考え方は、2011年1月に発表された、大阪維新の会の統一選マニフェストにも反映されていて、資料編の中(元データ 2011年1月27日のダウンロード版)で、人口1人当たりの行政経費は、大阪府+大阪市が約88万5千円、東京都+23区は76万8千円で「仮に、東京都制と全く同じ仕組みにして行政サービスを提供すれば、1人当たり117807円安上がりになり、大阪市の人口を260万人とすると3063億円の財源が生まれます」「これが成長戦略の原資になります」と主張されています。


 この話が変わってくるのが、橋下氏が大阪市長になった後の2012年11月の区割り案発表で、それまで8〜9の特別区とされていたのが、5区案と7区案となりました。(なぜ、変わったかの説明はありません)
 5区案は45万人規模、7区案は30万人規模と呼称されていましたが、大阪市を260万人として、5区案は平均52万人、7区案は平均37万人です。
 7区案は、30万人規模より2割ほど大きくなってしまいましたが、一応、30万人規模最適を継承する案と目されていました。

 それが、翌年の2013年12月、区割り案の検討をする中で、7区案は5区案より年間170億円のコスト高(再編コスト39億円、職員体制再編効果133億円の差)(参照:大阪都構想財政シミュレーションを見てみた(その1))で、なかなか黒字化できないとされ、橋下氏らは5区案を採用するとしたのです。(法定協議会での5区案決定は2014年7月)

 さて、ここからが本論です。

 元々、30万人規模にすれば大幅にコスト削減できるとして、30万人規模が最適と主張されていたはずが、「7区案(37万人規模)ではコスト高だ!」として、5区案(52万人規模)とされたのです。
 そして、なぜ30万人規模最適の試算が否定されるのかの検証も、特にされませんでした。

 2年の間に、試算の精度がどんどんと上がり、変わってきたのなら当然ですが、実は、そうとも言えません。

 2011年の30万人規模最適の試算は、予算全体を、住民1人当たり行政経費を基準として試算したものです。
 つまり、予算全体を、住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模で試算するという方法です。

 これに対して、5区案に決定した2013年の試算は次のようなものです。(現在、説明されている試算も、この2013年試算の細部を手直ししたもので、基本は同じです)
(1)3項目(システム経費、事務所経費(=ビル賃料)、議員経費)を、業者見積りなどで試算 → 歳出額の1%部分
(2)職員数を中核市5市(豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市)の住民1人当たり職員数を基に試算。(法定業務の追加部分は補正。7区案は30万人程度の中核市の職員数を参考に補正) → 歳出額の約1割部分
(3)残りは、特に試算せず、5分割しても「増減なし」として算定 → 歳出額の約9割部分

 つまり、5区案・7区案の3項目1%部分を無視して考えると、
〇2011年の30万人規模最適の試算は、予算全体を、住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模で試算。
〇2013年の5区案・7区案の試算は、予算全体の約1割の人件費部分のみ、住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模で試算し、9割部分は試算せず「増減なし」として算定。
・・・ですから、「住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模」という試算方法が正しいなら、予算全体に適用して試算してる「2011年の30万人規模最適の試算」の方が、予算の1割分のみに適用して、9割部分を試算しない「2013年の5区案・7区案の試算」より、試算の大枠としては精度が高いはずなのです。

 「2013年の5区案・7区案」を正当化する説明としては、
〇「2011年の30万人規模最適の試算」では中核市・特例市の区分をしていなかった。中核市並みの特別区の業務範囲で考えると、これで正しい。

・・・というのがありますが、次の理由であまり納得にいくものとは言えません。

〇中核市と特例市の業務差によるコスト差は、概ね3%程度(元データ 元サイト)で、「30万人規模最適の試算」の大幅な経費削減が、なぜ無くなってしまうのかの説明にならない。
〇中核市と特例市の業務差が、大幅なコスト増を生み出しているなら、特別区の業務範囲を特例市並みにした場合の検討が、されるべき。


 「住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模」という試算方法が正しいなら、「2013年の5区案・7区案の試算」より「2011年の30万人規模最適の試算」の方が、試算の方法として正しく、試算の精度も高いはずなのに、「2011年の30万人規模最適の試算」の方法で、試算すべきという声はありません。わたし自身も、試算すべきと思いません。

 「2011年の30万人規模最適の試算」より「2013年の5区案・7区案の試算」の方が、全体としての妥当性が高いなら、その理由は、僅か1%の3項目の試算などより、全体の9割を試算せず「増減なし」にしてることによるのでしょう。

 つまり、「2011年の30万人規模最適の試算」より「2013年の5区案・7区案の試算」の方が、全体としての妥当性が高いなら、それは、9割部分を「住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模」で試算するより、まだ、試算せず「増減なし」にしてる方が、マシだと思っているということです。

 大阪市の現在の行政サービスの特別区担当部分・年間1兆3千億円部分を、5つの特別区の区役所で、それそれ規模を小さくして実施した場合のコスト増減は、大阪都構想を考える時、大阪市民にとって、決定的に重要です。
 僅か1%の見積り誤差が百億円単位のコスト増減となり、住民サービスを維持できるかに直結するからです。

 大阪市民が、大阪都構想の是非を考えるなら、数%の誤差も無いように、特別区が担当する業務を、現在のまま実施するために、どれだけの経費や職員体制が必要か、しっかりと積み上げた試算が必要です。

 もし、「住民1人当たり(他の同規模市の平均の)行政規模」で試算するなら、その試算結果によって「特別区が担当する業務を、現在のまま実施できる」という、その試算が正解だというところまで必要なのです。

 失敗公共事業でよくあるような、事業を正当化するために、それらしい数字を並べただけの試算を作って、「財政推計では、黒字になるという試算が示されている」では困るのです。

 現在、「2011年の30万人規模最適の試算」より「2013年の5区案・7区案の試算」が使われています。
 それは、大阪市民に「こんな試算なら、試算などしない方がマシ」レベルの試算しか示されていないということを示しているのだと思います。


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2015年03月19日

財政調整特別会計についての特別区設置協議会での説明

 京都大学大学院教授の藤井聡氏が、2015年1月27日「大阪都構想:知っていてほしい7つの事実」で、「【事実3】年間2200億円の大阪市民の税金が市外に『流出』します」「【事実4】流出した2200億円の多くが,大阪市「外」に使われます」と主張されました。

 これに対して、橋下氏は「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」と反論をされました。
 以下は、2015年2月7日の橋下氏のツイートです。(元ツイート
s-00橋下氏ツイート.jpg

 今回の記事は、この特別会計について、法定協議会でどのような説明がされているかの確認です。

 第13回法定協議会での財政調整特別会計の資料とその説明です。
01特別会計イメージその1_140131.jpg
元データ 元サイト
元データ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 続きまして、財政関係についてご説明させていただきます。
 5ページ以降が財政関係でございますが、まず、6ページをお願いいたします。
 6ページに財政関係の一つ目の課題として、財政調整財源に関する課題がございます。
 パッケージ案では、現行法上の普通税三税、調整財源と呼んでおります法人市町村民税、固定資産税等、これらの三税に加えて、地方交付税を追加、加えるという案を提案させていただいたところでございます。
 その理由といたしましては、点線の囲みで書いておりますが、税収動向によっては、特別区の財政調整に必要な財源が不足する事態も考えられることから、制度を安定的に運営していくために不可欠との考えで提案したものでございます。
 それに関する国との調整及びその結果としての検討の方向性といたしましては、この交付税を加えるという提案につきましては、国のほうの考えといたしまして、地方交付税法上、国がその交付税の使途を制限できないということが規定されておりますことから、国との調整による検討の方向といたしましては、広域自治体の条例におきまして交付金の額に加算することを可能とする方向で国のほうで法令改正していただくという方向になっております。
 臨時財政対策債については、今の制度どおり、他の市町村と同様に特別区で発行できるようにする方向でございます。
 こうした法令改正が実現いたしますと、対応の方向として、新たな広域自治体の条例で、地方交付税の一定割合の額を特別区財政調整交付金の額に追加を行うことができることになりますので、こういう方向で検討しております。
 この法令改正と条例改正を組み合わせることで、新たな大都市制度に対応した財政調整を行っていくことが可能になるものと考えております。
 7ページは財政調整のイメージ図ということで、飛ばしていただきまして、続きまして、8ページをお願いいたします。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------
 ちなみに、文末の「7ページは財政調整のイメージ図ということで、飛ばしていただきまして」が、この資料についての直接の説明です。

 第16回法定協議会での財政調整特別会計の資料とその説明です。
02特別会計イメージその2_140718.jpg
元データ 元サイト

元データ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 私から、3番目の財政調整について、説明させていただきます。24ページをお開きください。
 財政調整につきましては、まず、この間、国との調整事項、あるいは設置の日が2年先となったことによりまして、一部制度の概要について変更しております。そのため、まず、24ページ、25ページでパッケージ案から変更になった点を簡単に説明させていただきたいと思います。
 財政調整の役割。これは変わっておりません。
 @の財政調整財源ですが、パッケージ案のときには、普通三税に加えて、地方交付税、これを加えて一定割合を特別区に交付していくというものでございましたが、国との調整によりまして、普通三税を調整財源とする。それに加えまして、大阪府の条例で定める額を加算できるようにするという方向で、調整しておりますので、こういうふうに記載を変えております。
 それから、調整主体は、変更なしでございます。
 Bの配分の考え方でございます。パッケージ案の際には、大阪府、広域自治体と特別区の配分割合を平成23年度実績で、24対76という形で数値としてお示ししておりましたが、その際には、平成24年度実績も踏まえて、この配分割合を決定していくものというふうに説明させていただきました。
 ただ、この点につきましては、特別区設置の日が2年延期になるということもございますので、記述として二つ目の点のところにございますが、制度移行までの地方財政制度の動向も確認した上で、設置の日までに大阪府知事と大阪市長で調整を行っていくという形にしております。
 それから、Bの配分の考え方の部分でございますが、普通交付金と特別交付金の割合について設定しております。パッケージ案の際には、90%と10%という設定をしておりましたが、これも国と調整している過程で、特別区の公債費を一旦特別区に交付してから、広域のほうに支出していただき、広域で一括で償還していくという方式に、改めましたことによりまして、この普通交付金の総額を増やしている形になっております。94対6%という形に改めております。
 それから、その他欄のところで、公債費という部分が中段にございます。
 公債費については、大阪府と特別区で3対7というのは変更ございませんが、今、先ほど申しましたように、パッケージ案の際は、償還は広域で一括で行うとしていた部分でございますが、ここを各特別区が大阪府に償還負担金を支出して、それから大阪府が一括で償還をするという形に変えましたことにより、こういう記載をしております。
 なお、特別区が負担する額につきましては、この特別区財政調整交付金の交付を通じまして、財源保障を行っていくこととしております。
 制度概要の変更点は、以上のとおりです。
 ページめくっていただきまして、26ページは財政調整のイメージ図でございますので、後ほどごらんいただけたらというふうに思います。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------
 ちなみに、文末の「ページめくっていただきまして、26ページは財政調整のイメージ図でございますので、後ほどごらんいただけたらというふうに思います」が、この資料についての直接の説明です。

 また、藤井聡氏の大阪府への移管財源2200億円のうち、特別会計を通るのは半分の指摘(参照:財政調整特別会計は大阪市から移転される2200億円の一部しか管理しない)に対し、ABC朝日放送「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」2015年3月7日放送分で、大阪市特別顧問の佐々木信夫氏が、残りの721億円は借金の返済と説明されていましたが、「借金の返済」(=既発公債の償還原資)は、財政調整財源を充てることも普通に想定されている(特別会計を通る1100億円でも借金の返済をする)ので、それに関連した資料も挙げておきます。

 第13回法定協議会での公債管理特別会計と財政調整特別会計の関係を示す資料。(元データ 元サイト
03公債費負担の流れ_140131.jpg

 特別区設置協定書(案)より。(元データ 元サイト
(四)大阪市債の償還にかかる財政調整財源の負担
「大阪府が負担する額については、財源配分並びに大阪府及び特別区間の財政調整を通じて財源を確保する」

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2015年03月24日

橋下氏の「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」に矛盾と思うこと

 京都大学大学院教授の藤井聡氏が、2015年1月27日「大阪都構想:知っていてほしい7つの事実」で、「【事実3】年間2200億円の大阪市民の税金が市外に『流出』します」「【事実4】流出した2200億円の多くが,大阪市「外」に使われます」と主張されました。

 これに対して、橋下氏は「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」と反論をされました。
 以下は、2015年2月7日の橋下氏のツイートです。(元ツイート
s-00橋下氏ツイート.jpg

 ただ、橋下氏が反論するように、「(大阪都構想で大阪市から大阪府へ移管される財源)2200億円は、特別会計で管理し、都区協議会がチェックするので、大阪市域外に流れないようになっている」とするには、いくつもの矛盾があります。その矛盾を整理しておきます。

(1)財政調整特別会計についての特別区設置協議会での説明で、「大阪市域外に流れないようにする」など触れられてもいない

 こちらの記事「財政調整特別会計についての特別区設置協議会での説明」に、特別区設置協議会で、2度、財政調整特別会計が取り上げられた際の議事録の該当部分を抜き出しましたが、見てもらえば分かる通り、「大阪市域外に流れないようにする」など、何も触れていません。


(2)調整財源を府の一般会計に入れてしまっては意味がない

 橋下氏の説明では「特別会計で管理しているので、大阪市域外へは流れない」としています。
 これは、「2200億円の移管財源を、一般会計で他の財源とごちゃまぜにしてしまうと、何に使われたのか管理が困難になる。2200億円の移管財源を、特別会計で別に管理をして、どこに使われるのか、きちんと分かるようにして、大阪市域外へ流れないように管理する」という意味だと思われます。
 でも、それならば、特別会計から大阪府の各事業へ直接に予算配分を行い、「どこに使われるか、きちんと分かる」ようにしないと意味がありません。

 特別区設置協議会で、財政調整特別会計は、次のように説明されています。(元データ元サイト
02特別会計イメージその2_140718.jpg

 大阪府分の調整財源は、一度、大阪府の一般会計へ繰出すとしています。そして一般会計で、各事業へ予算配分をするのです。
 この仕組みでは、調整財源が何に使われるかは、一般会計で他の財源とごちゃまぜにした結果を追いかけることになります。
 他の財源とごちゃまぜになる一般会計で、調整財源が何に使われるのか追いかけるのでは、特別会計に分けた意味がありません。(一般会計に混ぜてしまっては、使途の管理が困難だから、特別会計で管理するとしたはずなのに。)

 つまり、財政調整特別会計から一般会計へ、調整財源を繰出すとしているのは、財政調整特別会計が「調整財源が大阪市域外へ使われないように使途を管理する」という制度設計になっていないことを意味しています。

 「特別会計で管理しているので、大阪市域外へは流れない」という説明は、財政調整特別会計の実際の設計と掛け離れています。


(3)財政調整特別会計は2200億円の一部しか管理しない

 橋下氏が説明するように「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」なら、当然、2200億円全体を特別会計で管理しているはずです。
 でも2200億円のお金の流れは、次の通りで、実際には半分しか財政調整特別会計を通りません。(詳細及び注意事項など次を参照:財政調整特別会計は大阪市から移転される2200億円の一部しか管理しない
03特別区の納税と住民サービス_金額有り.jpg

 2200億円のうち、特別区を通るのは半分の指摘に対し、ABC朝日放送「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」2015年3月7日放送分で、大阪市特別顧問の佐々木信夫氏が、残りの721億円は借金の返済と説明されていましたが、「借金の返済」(=既発公債の償還原資)は、調整財源を充てることも普通に想定されています。
 関連資料は、次の通りです。
(A)第13回法定協議会での公債管理特別会計と財政調整特別会計の関係を示す資料。(元データ 元サイト
03公債費負担の流れ_140131.jpg

(B)特別区設置協定書(案)より。(元データ 元サイト
(四)大阪市債の償還にかかる財政調整財源の負担
「大阪府が負担する額については、財源配分並びに大阪府及び特別区間の財政調整を通じて財源を確保する」


(4)2200億円が大阪市域外へ流れないように、都区協議会がチェックするようにはなっていない

 橋下氏は「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」と説明しますが、都区協議会が財政調整特別会計に関わるといっても、調整財源の配分をどうするかの協議が主で、調整財源の使途を勝手に決めたり、調整財源を自由にできるという意味ではありません。
 「都区協議会がチェックする」なら、財政調整特別会計についてのルールが決められており、そのルールから逸脱した運用がされていないか「チェックする」ことになります。

 つまり「大阪市域外で使ってはならない」というルールが決まっていなければ、「チェックする」ことはできないのです。

 「調整財源(より正確には、2200億円の移管財源)を、大阪市域外で使ってはならない」というルールは、協定書案にも、過去の特別区設置協議会での検討事項にも見当たりません。

 協定書案で、都区協議会の協議事項は、次の通りとされていますが、調整財源の使途監視のようなことは、何もありません。(元データ 元サイト
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 また、大阪府・特別区協議会の処理する事務については、(中略)特別区財政調整交付金に係る条例を制定する場合において大阪府知事に対して意見を述べるほか、以下に掲げる事項を基本に、特別区の設置の日以降、大阪府知事と特別区の区長の協議により定めることとする。
・大阪市から大阪府が承継する財産の事業終了後の取扱いの協議
・大阪市から大阪府が承継する株式及び出資による権利の処分並びに貸付金債権の償還による収入などの取扱いの協議
・大阪市から大阪府が承継する財務リスクの解消時の残余財産の取扱い及び引当財源が不足する場合の財源の捻出、特別区の負担方法の協議
・大阪市から特別区又は大阪府が承継する事務に関して、特別区の設置の日前の要因による損失の発生が特別区の設置の日以降に新たに明らかになった場合の財源の捻出、特別区の負担方法等の協議
・特別区の設置の日以後の事務の分担に関する取扱いの協議   等
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 例えば、大阪市の財産については、特別区設置協議会での過去の検討の中で、「市民が長い歴史の中で築き上げてきたもの」「広域自治体への承継は必要となるものに限定」「財産の事業終了後は都区協議会で協議」ということを明確に謳います。(元データ 元サイト
 これを受けて、協定書案でも、都区協議会の協議事項として「大阪市から大阪府が承継する財産の事業終了後の取扱いの協議」としているのです。

 財源については、こういった大阪市民への帰属の理解など何もなく、だから事業終了時に財産の協議はあっても「大阪市から大阪府が承継する事業の終了後の財源の取扱いの協議」は無いのです。
 だから「調整財源(より正確には、2200億円の移管財源)を、大阪市域外で使ってはならない」といったことも決められておらず、都区協議会がチェックするようにもなっていません。


 ここまでの(1)〜(4)の状況を見る限り、協定書案やこれまでの特別区設置協議会での検討過程は、橋下氏が説明するような「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」にはなっていません。・・・というか、「2200億円は、大阪市域外には流れない」ようにする制度設計の痕跡すら見当たりません。

 結局、藤井聡氏に「年間2200億円の大阪市民の税金が市外に『流出』します」と指摘され、橋下氏としては、その指摘が、とても都合が悪かったので、(そんなこと、それまで全く考えていなかったのに)「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」と主張したというのが、一番妥当性が高いように思います。

 もしかして橋下氏は「2200億円は、大阪市域外には流れない」と言ってしまったから、制度的無理はあっても、何か体裁だけは整えようとするのかもしれません。
 でも、体裁だけ整えるような「2200億円は、大阪市域外には流れない」なら、例えば、現在の大阪府の大阪市内施設の経費を全部リストアップしてきて、「とにかく、大阪市内での支出に2200億円は使ってるよ」となる可能性が十分あります。(というか、一般会計でごちゃまぜにする以上、そういうピックアップでないと、かなり困難です)

 このような方法で、移管財源を「現在の大阪府の大阪市内分支出」に充て、それで浮いた大阪府の財源を(大阪市域外を含む)他の使途に充てることを、藤井聡氏は「ロンダリング」と呼び、実質的に市外への市財源の流出になると指摘しています。


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posted by 結 at 06:55| 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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