〇大阪市民だけ、こんなに借金が多いのは、市立大学、市立病院、港、高速道路、それからその地下鉄まで、大阪市民は270万人で、ありとあらゆるものを担いでるから。
東京都民は、港も高速道路も地下鉄も大学も病院も、1300万東京都民で神輿を担いでるから一人当たりの負担が軽くなる。
〇大阪都構想は、二重行政を無くす為に知事と市長の間で仕事の役割分担をやり、市民にとっては、市民と府民で負担を分かち合い、今まで大阪市民だけで背負ってたものを、880万人大阪府民で、背負いなおしましょうということ。
〇野党の市会議員は「市民には、こんな難しいこと分からないから、市議会議員が判断するんだ」と言ってるが、市民を馬鹿にしてる。協定書の中身なんて、市会議員だって、分かっちゃいない。
〇大阪都構想の問題は、分厚い協定書の中身を議論する話じゃない。判断するのは、今までの大阪の政治に決別するか、新しい大阪の政治を目指すかだ。
大阪都構想が「知事と市長の間で仕事の役割分担をするもの」というのは、そうだと思います。
でも、大阪都構想が「市民にとっては、市民と府民で負担を分かち合い、今まで大阪市民だけで背負ってたものを、880万人大阪府民で、背負い直すもの」なのかというと、わたしが知っている大阪都構想の資料の内容とは、大分違います。
昨年2013年8月に特別区設置協議会(=法定協)で示されたパッケージ案と呼ばれる資料で、大阪都構想の概要を次のように示しています。(元データ パ04-P6 元サイト)

大阪市が現在行っている2145事務のうち、広域の事業だとして253事務を大阪府が移管を受け、住民に身近な事務だとして1913事務を特別区が担当するとしています。
これをお金の話にすると、大阪市が現在約1兆7千億円で行っている事務のうち、広域の事業だとして約4千億円部分を大阪府に移管し、約1兆3千億円部分を特別区が担当するということです。
4千億円部分の事業が大阪府に移管されると、特定財源や(事業相当分の)地方交付税などが、事務の移管に伴って自動的に移動します。これは当然のことです。
事業移管に伴って特定財源や地方交付税だけで移動されない部分、表で言うと「1634億円」の負担部分が、上記の橋下市長の演説で「市民と府民で負担を分かち合い、880万人大阪府民で、背負い直す」負担部分と言えます。
では、表では大阪府が「財源不足になる」としている1634億円を、どのように賄うか整理しているのが、次の表です。(元データ パ04-P27)

この表は、大阪市全体の事業8450億円(一般財源ベース)のうち、大阪府が2288億円部分、特別区が6173億円部分を担当し、大阪市の市税などの財源8450億円を大阪府に2288億円、特別区に6173億円を割り振ることで賄うことを示しています。
大阪府に移転する財源2288億円のうち、地方交付税の移転分など、制度的に事業とセットで移管されるのは621億円に止まるため、大阪市の市税(6361億円)と地方交付税(1088億円)のうち、都市計画税・事業所税443億円と財政調整財源の24%分1191億円の計1634億円を大阪府の財源に移転するとしています。
つまり、大阪市の広域事業4千億円部分を大阪府に移管しても、そのために必要となる財源は、大阪市民の市税で、大阪市民が負担し続けるという制度設計です。
大阪市から大阪府へ移管する事業等の財政負担がどうなるかについて、この表の「大阪府 ◆公債費(投資的経費相当分) 721億円」部分を取り上げて、第16回特別区設置協議会(=法定協)(2014年7月18日開催 維新委員のみで行われたもの)の中で、かなり端的な質疑がされています。(元データ 議P10 元サイト)
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(紀田委員)
公債費の償還についてなんです。発行済みの既発債については、大阪府が3、特別区が7の割合で負担するというふうにあるんですけども、この大阪府の3の内容は、税源配分であったり、財政調整財源であったりするところから負担されるものであって、ちょっと言葉を選ばずに言うと、要するに大阪市民が借りた公債費を、大阪市以外の府民の負担で返すようなものではないと、既に現在、大阪市の収入の範囲内が、大阪府に移転するので、その移転した分の中から返すという理解だと思うんですけど、これで、その理解でよろしいですか。
(浅田会長)
手向部長。
(府市大都市局手向制度企画担当部長)
先生がおっしゃったとおりで、基本的に既発債の大阪市分について、今回、広域の負担分という形で広域に移転しますが、その必要な財源は、制度上、移転する財源及び財政調整財源でもって賄えるという形になります。
(浅田会長)
紀田委員。
(紀田委員)
わかりました。
それであれば、全くおかしなことはないと思います。むしろ当然こんな数字になるんだと思います。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------
橋下市長は、タウンミーティングで「大阪都構想は、二重行政を無くす為に知事と市長の間で仕事の役割分担をやり、市民にとっては、市民と府民で負担を分かち合い、今まで大阪市民だけで背負ってたものを、880万人大阪府民で、背負いなおしましょうということ」と説明します。
でも、特別区設置協議会(=法定協)での資料をみる限り、「大阪都構想は、知事と市長の間で仕事の役割分担をやり(二重行政の無駄の解消があることは示されていない。)、今まで大阪市民だけで背負ってきた負担は、知事の役割分担になっても、大阪市民だけで背負い続けましょう」という内容です。
大阪都構想で、広域行政だとして大阪市から大阪府へ移管する事務・事業の経費を、260万大阪市民で負担し続けるのか、860万大阪府民で負担するのかは、制度設計の大きな根幹のひとつです。
大阪都構想がよく分からないと言われている中で、制度の根幹について、都合よく捻じ曲げて、事実と異なる説明を行うのは、大きな問題だと思います。
橋下市長はタウンミーティングの中で、「野党の市会議員は『市民には、こんな難しいこと分からないから、市議会議員が判断するんだ』と言ってるが、市民を馬鹿にしてる」と主張するのですが、特別区設置協議会での資料や議論など市民は知らないだろうと、制度の根幹を都合よく捻じ曲げ、事実と異なる説明をするのは、余程、市民を馬鹿にしたことだと思います。
橋下市長はタウンミーティングで、協定書など読む必要はなく、今までの大阪の政治に決別するか、新しい大阪の政治を目指すかを判断すればいいと主張します。
でも、彼らに都合の良い話ばかりで煽り立て、噓の説明までするセールスマンの説明だけを聞いて、商品がどんなものかも知らず、契約書の内容も知らず、売買契約を結んで幸せになる方法を、わたしは知りません。
元記事「橋下氏街頭演説 こういう大阪都構想の説明はいけないと思う・再び」より
大阪都構想は、大阪市の事務事業4千億円部分(一般財源ベース2288億円部分)を大阪府が担当し、その事業部分の財源を大阪府に移管するものだとしていますが、それでは大阪市民に損だと思う理由については、次の記事を参照ください。
〇大阪都構想の「事業配分に沿った財源配分」が、大阪市民に損だと思う3つの理由
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