2015年01月26日

協定書の大阪都構想が出来が悪いのは、こんな所

 協定書というより、整理したのは「大阪都構想のパッケージ案を、なぜ出来が悪いと評価してるか」なのですが、パッケージ案で指摘した出来の悪い点は、協定書でも何も改善されていない(・・・というか、劣化してる。)ので、このタイトルにしました。
 では、なぜ、パッケージ案の出来が悪いと評価してるかです。

 まず、知事・市長ダブル選挙当時の主張から、大阪都構想の制度的全体像を理想的に整理するなら、要点は次のようになると思います。

(1)大阪府・大阪市の二重行政の無駄解消として、大阪市の広域行政部門を府と統合し、二重行政の無駄解消による大規模な統合効果の創出
(2)大阪市の広域行政部門の統合と大阪府庁の解体的再編を行い、更に統合効果を追加財源として投入して生み出す、「強い大阪」を実現する広域行政体の組織像
(3)スムーズな住民の意見反映ができる規模(彼らの当時の主張は30万人規模。ただし、意見反映を主体に考えるなら10万人規模または24区体制が求められると考えています。)で、現行大阪市の住民サービスを量的・質的に低下させないで、しっかりと住民福祉に機能する特別区の組織像
(大阪市より、ずっと小さな規模の行政体となる特別区は、(例え5区・50万人規模であっても)当然に、行政コストは増加し、行政レベル(専門性)は低下します。その回避のため、規模縮小によりコスト増と行政レベル低下を抑える仕組み作りと、追加財源としての統合効果の投入が必要になります。勿論それは、特別区単位の住民サービス選択を妨げるものであってはなりません。)

 これが100点満点で実現するなら、わたしが大阪都構想に反対する理由の半分以上はなくなります。つまり、100点満点ではないものしか出てこないだろうと予想してたのは事実です。
 それでも看板政策として掲げるのですから、せめて70点程度の具体化を図った制度的全体像(ここではパッケージ案)が示されるものと思っていました。

 例えば、(1)の統合効果について、二重行政の無駄など、実際には無くても、せめて大阪府・大阪市の類似事業統合による統合効果は、最大限に出してくるとか、(2)の広域行政体の組織像は、提案側は「大阪府も解体的に再編して、強い大阪を実現する広域組織体の組織案だ」と提案するが、客観的には、ちょっと誇大評価だろう、という程度のものです。

 でも、パッケージ案が示す大阪都構想の内部構造は、わたしの評価では40点の赤点ラインも遥かに下回る、10点とか20点の代物です。


 まず(1)の統合効果についてです。

 パッケージ案では、大阪市から広域行政部分として歳出4千億円部分を、大阪府と統合するとしています。
 それなのに、「大阪都構想の効果額」だとしている中で、府市統合の効果額と呼べるものを整理すると31億円だけでした。
 「二重行政の無駄」なんて無くても、4千億円も統合すれば、数百億円の統合効果くらいは欲しいです。
参照:4000億円も統合すれば、数百億円の府市統合効果くらい出せよと思う

 統合効果創出の点から見てパッケージ案は、完全に失敗プランとしか、評価できません。

 府市統合の統合効果創出の失敗は、大阪都構想への期待感を萎ませます。
 でもそれ以上に、パッケージ案の協議を進める中では、「強い大阪の広域行政体」を作るためにも、分割後特別区の住民サービス維持のためにも、追加投入できる財源がほとんどないということですから、かなり協議の足を引っ張る原因となりました。


 次に(2)「大阪市の広域行政部門を統合し、統合効果を追加財源として投入し、大阪府庁の解体的再編によって生み出す、『強い大阪』を実現する広域行政体の組織像」です。

 この点については、簡単です。全く何の記述もなく、「『強い大阪』を実現する広域行政体の組織像」など何も示されていないのです。
 ただ、大阪市から大阪府へ移管する事業、財源、資産が示されているだけです。
 これでは「強い大阪の実現」など期待しようもありません。「大阪都構想は、ただの大阪市解体プランだ」と批判されるのも当然です。


 次に(3)「スムーズな住民の意見反映ができ、住民サービスを維持しながら、しっかり機能する特別区の組織像」です。

 「理想的に整理した場合」として、大阪市より、ずっと小さな規模の行政体となる特別区は、行政コストの増加や行政レベル(専門性)の低下が見込まれるので、それを抑える仕組み作りと統合効果の一部を活用した追加財源が必要と指摘しました。

 でもパッケージ案に、現状より小さな規模となる特別区で、行政コストの増加や行政レベル(専門性)の低下を抑える仕組み作りは、ほとんど無策です。
 少し一部事務組合で共同運営する提案はあり、「巨大過ぎる一部事務組合だ」と批判されてはいますが、分割の難しい業務の避難場所に使っているだけで、「行政コストの増加や行政レベルの低下」を抑えるものにはなっていません。

 追加財源は、統合効果から持ってこれないので、市政改革効果を充てるとしていますが、当面の収支不足対策が精一杯で、行政コストの増加に対応するものではありません。

 ではパッケージ案では、行政コストの増加や行政レベルの低下に対して、どのような対応を示しているのでしょうか。

 まず、行政レベル(専門性)の低下については、一切無視です。第1ステージの事務分担の議論で、生活保護事務の企画部門の府移管を提案した時だけ、行政レベル(専門性)の低下に言及しましたが、パッケージ案では、生活保護事務の企画部門も特別区へ分割移管になりましたから、第1ステージで主張してたことさえ無視です。

 行政コストの増加も、基本「増えない」で乗り切る内容です。
参照:「大阪都構想財政シミュレーション(その3) 今のサービス維持に必要な職員数が知りたいのに
大阪都構想財政シミュレーション(その4) 家を建てるなら見積もりは取りたいよ

 「現在1兆3千億円でやってる事務が、特別区でそれぞれ行うことにして、1兆3千億円でできないはずがない」そうで、歳出額の90%について分割後の試算も行わず(=コスト増の計上は無し)、歳出額の9%を占める人件費について「大阪市を5つの特別区に分割すると職員数を削減できる」という不思議な試算を行うと、歳出の1%を占める3項目の試算で5割増の結果が出ても、5区案なら「大阪市を特別区に分割すると、行政コストが削減される」という不思議な試算が出来上がります。

 このような試算ですから、試算結果の予算額と職員数で、今まで通りの住民サービスを維持できるかの検証など、行っていません。法定協議会で野党委員からそういった要求もありましたが、拒否してました。
 実際、パッケージ案の発表直後に報じられた記事(元記事)では、このパッケージ案の作成に関わった幹部職員が「市長や知事の意向に沿うように資料をまとめたので、相当無理な作りになっている。机の上で機械的に数字をはじいただけで、うまくいくかシミュレーションしたわけではない」と不備を認めたと伝えています。

 大阪市を5つの特別区に分割すれば、普通に考えれば、必要な予算額も職員数も増えるはずなのに、「今まで通りの予算額と15%減の職員数をあてがうから、それでどうするかは、特別区ができてから、それぞれの特別区で考えてくれ」というのが、パッケージ案が示している中身なのです。

(注)大阪都構想が、パッケージ案から協定書になって劣化した一つが財源配分です。
パッケージ案は、府と特別区で事務配分に沿った財源配分を行うと明記していました。
「協定書になっても、事務配分に沿った財源配分は変わらない」と説明するのですが、事務配分に沿った財源配分の保証について、直接も間接も協定書に明記はされていません。協定書による明文の保証ではなく、運用次第になってしまいました。


元記事「大阪都構想は何を間違えたのか?(その2)パッケージプラン」より

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posted by 結 at 04:27| 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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