2015年03月08日

市役所5分割のコスト増と24区役所を5つへ集約のコスト減、どちらが大きいか

 大阪市を特別区に分割するというのは、「市役所など大阪市全体のことを1ヶ所で行う事業を5つの特別区の区役所へ分割して、それぞれで行う」のと同時に、「現在の24区役所で行っている仕事を、5つの特別区の区役所で集約して行う」です。
 市役所で行う仕事を5つの特別区の区役所へ分割して行うと経費や仕事量は、一般的に「変わらないか、増えるか」だとしても、現在の24区役所で行っている仕事を、5つの特別区の区役所へ集約して行うと経費や仕事量は、一般的に「変わらないか、減るか」です。
 市役所の仕事を5つの特別区の区役所へ分割することで増える経費や仕事量と、現在の24区役所の仕事を5つの特別区の区役所へ集約することで減る経費や仕事量のどちらが大きいのかは、整理が必要です。

 まず、「市役所の仕事で特別区の区役所へ分割する仕事量」と「現在の24区役所の仕事で特別区の区役所へ集約する仕事量」のどちらが大きいのかを、従事者数をベースに考えてみます。(予算の支出額で比べるなら、過去、橋下市長が「区長の予算は○億円」とネタにしていたように、市役所側が圧倒的です。)

 まず、職員数の割合ですが、平成24年4月の大阪市の市長部局等職員数が13845人。(区役所職員数を含みます。)広域移管の職員数を補正すると、広域移管で府へ移すのが2053人、府から来るのが58人、差引11850人です。
 これに対して、パッケージ案に挙げられていた現区役所職員数を合計すると4912人。割合は42%。
 市役所側と区役所側で分けると、区役所側の方がやや少ないようです。

 次に、集約した時の効果割合(逆にいうと、分割した時の影響度合い)を考えます。
 以前の記事「今更ですが、大阪都構想での事務分担の議論」の保健所や生活保護の事務分担の議論の中でも出てきていましたが、市役所や保健所(生活保護では緊急入院保護業務センターの例が挙がっていました。)が大阪市一括で事務を行うのは、大阪市一括で行うのが効率的な業務です。裏返しに、区役所で事務を行うのは、大阪市一括で行っても、それほど効率的ではない業務です。

 合わせて言うと、大阪市の事業を特別区に分割して行うとは、次のふたつを合わせて行うことです。

(1)従事者数のやや多い、分割して行うとかなり非効率な業務を1市役所から5つの特別区の区役所へ分割(この分割で特に問題になる点は、記事「大阪市の本庁機能の分割を考える」を参照)

(2)従事者数のやや少ない、集約してもそれほど効率の上がらない業務を5の現行区役所から、1つの特別区の区役所へ集約

 (1)の分割の影響と(2)の集約の効果を比較するなら、(1)の分割の影響の方が大きいことは明らかでしょう。
 24区役所の集約による効果は、分割によるコスト増を覆すようなものには、なりそうにはありません。


 また、5の現行区役所から特別区の区役所へ業務を集約する、いくらかの効果を台無しにしそうな話があります。

 24区役所から特別区への業務集約の効果は、業務全体を集約しなければ効果になりません。
 それなのに、パッケージ案では現在の24区役所に対応して、特別区の支所を配置するとしており、現在の区役所業務のうち、区役所と支所の事務分担を次のようにするとしています。(元データ 01-P24 元サイト
支所の事務.jpg

 人員配置の上で、支所を効率的に運用しようとすれば、事務精通者が必要な業務を支所の窓口業務から除外して、基礎的な知識だけで支所の窓口業務を行えるようにすることが必要です。そうすることで、支所に少人数の職員配置で幅広い範囲の窓口業務を行うことができ、支所の誰かが休暇を取ることがあっても、他の職員が補完することができます。

 支所の事務分担表を見ると、現在の24区役所の対市民の窓口業務の大半を支所で行うとしています。(更に凶悪なことには、支所の業務とした窓口業務は、区役所の業務から外してあります。)
 恐らくは、「特別区になって特別区の区役所は遠くなっても、支所で今までの区役所で行っていた手続きや相談はできるから、市民の利便性は低下しない」と言いたいのでしょう。

 でもこの事務分担のように、支所で「今までの区役所で行っていた手続きや相談ができる」ようにしようと思えば、支所に事務精通者の配置が必要です。事務精通者が精通する事務の範囲は当然狭いですから、1支所に配置を要する職員数も、多く必要になります。

 現在の区役所であれば、窓口業務と内部事務を同じ場所で行っていますから、窓口が暇ならば他の事務作業を行うことができますが、この事務分担のように支所で窓口業務、特別区の区役所で内部事務としてしまうと、窓口が暇な時、窓口要員は遊ばせておくことになります。
 特別区はそれぞれ5の支所を、現在の24区の単位で配置しますから、事務精通者を配置しながら遊ばせてしまう窓口要員の総数は、馬鹿にならないでしょう。

 特別区になっても「支所で今までの区役所で行っていた手続きや相談ができる」から、市民の利便性は変わらないと言い訳をしたいのは分かりますが、当然、このような事務分担・職員配置は非効率です。
 区役所現場の人からすれば「支所にそんな職員を貼り付けようとすれば、区役所を特別区に集約する効果なんて吹っ飛ぶし、そもそもどうやれば、支所にそんな職員を貼り付けられるのか分からない」という話になるように思います。
 パッケージ案は、言い訳に使いたい支所の事務分担は明確に示しますが、区役所ごとの部門別の職員配置数まで細かく計算しながら、支所の職員数や運用イメージには一切触れていません。


 また、現在の区役所の対市民向け窓口事務を、特別区の区役所と切り離して支所に担当させる問題を、もう1点指摘しておきます。

 大阪市を特別区に分割する、ほとんど唯一の効果は「地域の実情に応じた施策展開ができる」です。(ただ、形式的にはそういう話が成立するとしても、40万人規模とか70万人規模の基礎自治体が、市民に身近な行政運営ができる規模だとは、わたしは全く思っていません。ニアイズベターを語るなら、規模が大き過ぎます。)
 そこには当然、「市民の意見に現在よりも丁寧に耳を傾けられる」という要素も含まれているはずです。

 その市民の意見が、最も直接的に市役所・区役所へ届けられる場のひとつが「窓口」ですが、その窓口対応から、これまでの企画担当だけでなく、区役所の内部事務担当すらも遠ざけてしまうというのです。
 果たして、特別区には、今までより、市民の声が届くようになるのでしょうか?

元記事「大阪都構想パッケージ案のコスト論」より

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posted by 結 at 03:47| 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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